株式会社ポリディアインク 一級建築士事務所 POLIDEAINC

分散、希釈による都市住宅の森 (設計競技案)

日本建築学会近畿支部設計競技2010

「コンクリートと木のコラボレーションによる持続可能な住まいと地域住環境の設計」においての一般部門優秀賞受賞提案。

大阪市の都心部における戸建て住宅群の計画である。
現在、大阪駅をはじめとした都市再開発計画で、市内各所で空前の新築ビルラッシュである。
商業ビルだけでなく、オフィスビルにおいても、老朽化したビルの建て替え時期であるのに加え、百貨店などによる競争激化に起因する新築も少なくない。
そこでは、より、高密度で、省エネルギーな高効率が優先され、人々の購買意欲を掘り起こしそのキャパシティーを拡大させることが建築の主たる目的のようにも思えてくる。
では、この都市が持つ、建築物に対する本来のニーズは、どうだろうか。
昼夜の人口差が大きい、ビジネスや商業の中心地の北区や中央区。その周辺に位置する西区などのビジネス街では老朽化でない空きビルが目立ち、そのほとんどは住居としても機能は無論持たない。
昨今の流行で、ほんの一部はリノベーションやコンバージョンされているものの、全体数からすると上手く機能しているとは言いがたい状況である。
高密度で、高効率なオフィスビルは、この地域では無論不用である。
かつて、大阪の商売人たちは、住まいながら働いていた、この非常に便利な土地に現在飽和状態にあるオフィスに換わり、低負荷の住宅群を作ってはどうだろうか。
現代、人が快適に生活するには、周辺環境に負荷を掛けることは、必然となってしまった。
技術革新で環境に優しい方法が次々と開発されようとも、今のように高密度で人が住むならば、環境負荷や汚染の度合いは、なかなか下がるものではない。
それは、あたかも、人間の皮膚に炎症などが起こるときの原因が細菌などの一定数量以上の繁殖による場合に似ている。
この計画では、樹木が効率的に健康に育つための距離、70年程度で成木の16m程度の樹木を間伐する距離約5mを部屋と部屋の距離とし、各部屋にそれぞれ一本の樹を抱かせ、人口を分散し密度を希釈する。
間伐する距離がひとつの基準として、人の住まいを制御する。5mという距離は居室としては、さほど広くなく、部屋と部屋に向かい合うように開口部を設け、らせん状に高低差をつけることで、プライバシーを保ちながら適度につながる距離感をも生み出している。
やがて、樹木が、その寿命を全うした後には、ポリゴンのような有機的なグリッドに並ぶ住宅群が形成されていることで、人と人がしっかりと向き合えるコミュニティーとなる。

2011年

分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
分散、希釈による都市住宅の森
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